調導師 ~眠りし龍の嘆き~
‡〜再会〜‡
「お疲れ様でした」
「さようなら。
気をつけて」
「はい」
美しい月が夜空を彩っている。
月は幼い時を思い出される。
何年も一人で閉じ込められていた部屋からは、夜の月しか見られなかったけれど、嫌いではなかった。
窓にはまった月はいつでも美しく、日毎に形を変えていく様は、飽きることがなかった。
『ズザッツ』
整然と立ち並ぶ住宅街。
その一つの壁にもたれ掛かるように人影が張り付いている。
そっと近づいていくと、しだいに姿がはっきりとしてくる。
黒い服。
薄汚れた素足。
俯く顔の頬には、切り傷が大きく口を開いて血が流れている。
「大丈夫ですかっ」
思わず駆け寄って、倒れ掛かる身体を抱えるように支える。
「みな…と……」
「っ…何で私の名前っ…」
「ごめん…」
「…」
ふっと重くなる感覚。
気絶してしまったのだと気づくのに少し時間がかかった。
確かに名前を呼ばれた。
なぜ私の名前を知っているのか。
なぜ謝るのか。
多くの疑問は、コートの内ポケットから転がり落ちた小刀が解決してくれた。
足元に軽い音をさせて落下したのは、『殺し屋』の男が持っていた物だ。
黒いコートにも確かに見覚えがある。
血の気の失せた白い顔は、月光に照らされ、更に本来あるべき色から程遠いものにしてしまっている。
力無く、重力に逆らう事も出来なくなった身体を抱きとめて、その場でしばらく動くことができなかった。
「お疲れ様でした」
「さようなら。
気をつけて」
「はい」
美しい月が夜空を彩っている。
月は幼い時を思い出される。
何年も一人で閉じ込められていた部屋からは、夜の月しか見られなかったけれど、嫌いではなかった。
窓にはまった月はいつでも美しく、日毎に形を変えていく様は、飽きることがなかった。
『ズザッツ』
整然と立ち並ぶ住宅街。
その一つの壁にもたれ掛かるように人影が張り付いている。
そっと近づいていくと、しだいに姿がはっきりとしてくる。
黒い服。
薄汚れた素足。
俯く顔の頬には、切り傷が大きく口を開いて血が流れている。
「大丈夫ですかっ」
思わず駆け寄って、倒れ掛かる身体を抱えるように支える。
「みな…と……」
「っ…何で私の名前っ…」
「ごめん…」
「…」
ふっと重くなる感覚。
気絶してしまったのだと気づくのに少し時間がかかった。
確かに名前を呼ばれた。
なぜ私の名前を知っているのか。
なぜ謝るのか。
多くの疑問は、コートの内ポケットから転がり落ちた小刀が解決してくれた。
足元に軽い音をさせて落下したのは、『殺し屋』の男が持っていた物だ。
黒いコートにも確かに見覚えがある。
血の気の失せた白い顔は、月光に照らされ、更に本来あるべき色から程遠いものにしてしまっている。
力無く、重力に逆らう事も出来なくなった身体を抱きとめて、その場でしばらく動くことができなかった。