調導師 ~眠りし龍の嘆き~
‡〜幸せの足音〜‡
カーテンを開ける永久先生に続いて、中を覗き込む。
傷を手当てされた男は、眩しそうにこちらに顔を向けていた。
「眩しい?
先生、カーテン閉めるよ」
「おう」
カーテンを閉め、自身も内側に入る。
武器も持っていない男に引けを取るわけがない。
なにより、全身に酷い傷を負っている為、ろくに動けないだろう。
「美南都…ここは…」
「ここは私がお世話になっているお医者の診療所。
あなたが倒れた所から、一区画行った所。
近くで助かった。
さすがにあそこより遠かったら挫折してた」
「お前さんを半ば引きずって飛び込んで来てな。
驚いたぞ」
「傷に障らないようにとも思ったんだけど、時間の方を優先したから、悪化したかも」
血の気の失せた顔は、どうにも父の死に顔を思い出させ、ほとんどパニック状態で駆け込んでいたのだ。
「お前さん、宝堂に雇われとるのか?」
「…父が宝堂の裏の仕事をする人だった。
父は、半分一族の血を引いている。
そういう人間を、一族は異端視し、裏の仕事を任せてきた…俺は父の後を継いだ」
「母親はどうしたんじゃ」
「八つの頃、父に殺された…祖母も了承済みで、その後父に引き取られ、仕事を教えられた」
「なぜ美南ちゃんを狙ったんじゃ?」
「何も教えられていない。
写真と住所の書かれた紙を渡されて、消して来いと言われた…君だとは知らなかった…」
こちらを見上げ、だがすぐに目をそらし、申し訳なさそうに語りかけてくる。
「なんで私の事を知っているの?」
「……子どもの頃、仕事の為の訓練を毎日のようにさせられて、自由になるのは夜だけだった…裏庭に月を見に外へ出た…鉄格子のはまった小さな窓が気になって……中から、声が聞こえた…」
「…シン…?」
カーテンを開ける永久先生に続いて、中を覗き込む。
傷を手当てされた男は、眩しそうにこちらに顔を向けていた。
「眩しい?
先生、カーテン閉めるよ」
「おう」
カーテンを閉め、自身も内側に入る。
武器も持っていない男に引けを取るわけがない。
なにより、全身に酷い傷を負っている為、ろくに動けないだろう。
「美南都…ここは…」
「ここは私がお世話になっているお医者の診療所。
あなたが倒れた所から、一区画行った所。
近くで助かった。
さすがにあそこより遠かったら挫折してた」
「お前さんを半ば引きずって飛び込んで来てな。
驚いたぞ」
「傷に障らないようにとも思ったんだけど、時間の方を優先したから、悪化したかも」
血の気の失せた顔は、どうにも父の死に顔を思い出させ、ほとんどパニック状態で駆け込んでいたのだ。
「お前さん、宝堂に雇われとるのか?」
「…父が宝堂の裏の仕事をする人だった。
父は、半分一族の血を引いている。
そういう人間を、一族は異端視し、裏の仕事を任せてきた…俺は父の後を継いだ」
「母親はどうしたんじゃ」
「八つの頃、父に殺された…祖母も了承済みで、その後父に引き取られ、仕事を教えられた」
「なぜ美南ちゃんを狙ったんじゃ?」
「何も教えられていない。
写真と住所の書かれた紙を渡されて、消して来いと言われた…君だとは知らなかった…」
こちらを見上げ、だがすぐに目をそらし、申し訳なさそうに語りかけてくる。
「なんで私の事を知っているの?」
「……子どもの頃、仕事の為の訓練を毎日のようにさせられて、自由になるのは夜だけだった…裏庭に月を見に外へ出た…鉄格子のはまった小さな窓が気になって……中から、声が聞こえた…」
「…シン…?」