調導師 ~眠りし龍の嘆き~
‡〜壊される平穏〜‡
一族の中では、異質な存在として育ってきた為に、深い劣等感が秦の中には根付いてしまっているのがわかった。
とても寂しい思いをしてきたのだ。
私が去ってからも…。
立ち止まってしまった秦に何て声をかければ良いのだろう。
しばらく、どうにもならない気まずい空気が流れる。
ふと、目の端に草むらが映った。
「…例えばさ…このシロツメ草」
何の話しをし始めたのだろうと訝る秦に微笑んで、こっちへ来いと手招きする。
「人はさ…多数が正解で、少数は不正解だって決めつける。
けど反対に、希少価値って言って物は大切にする。
人には当てはめないのに、物には少数の物を大切にしなきゃって思う。
馬鹿な考え方だよね」
「……」
「人は、三つ葉の中のほんの数個の四つ葉を見つけて喜ぶ。
けど、クローバーからしたら、四つ葉は異端な存在でしょ。
奇形ってことになるから。
でも人は、四つ葉を見つけると幸せそうに笑うの…あった」
ほらっと言って見つけた四つ葉を秦に差し出し、自然に緩む頬をそのままに、不思議そうな顔を見つめる。
「私にとって秦は、この四つ葉みたい。
今日も教室の窓から、秦の姿を見つけた時、すっごく幸せな気持ちになった…。
他の誰が異端だと言ったって、私にとって秦は、幸せで満たしてくれる存在。
秦はそれだけじゃ嫌?」
「いや…っじゃないっ…うれしい…」
秦は今までに見たことのない程の優しい笑顔で、四つ葉を大切そうに受け取る。
手を繋いで歩き出す。
二人して頬をゆるめたまま、幸せで心地の良い空気が満たす。
キュキューッ。
完全に雰囲気を壊すように勢いよくタイヤを鳴らして黒塗りの高級車が前方に止まった。
「っ!!」
驚くこちをよそに、素早く開いたドアからSPらしきスーツの男が三人降りて、こちらに駆けてくる。
反射的にかばうように私の前に立ち塞がった秦の背中を呆然と見上げた。
一族の中では、異質な存在として育ってきた為に、深い劣等感が秦の中には根付いてしまっているのがわかった。
とても寂しい思いをしてきたのだ。
私が去ってからも…。
立ち止まってしまった秦に何て声をかければ良いのだろう。
しばらく、どうにもならない気まずい空気が流れる。
ふと、目の端に草むらが映った。
「…例えばさ…このシロツメ草」
何の話しをし始めたのだろうと訝る秦に微笑んで、こっちへ来いと手招きする。
「人はさ…多数が正解で、少数は不正解だって決めつける。
けど反対に、希少価値って言って物は大切にする。
人には当てはめないのに、物には少数の物を大切にしなきゃって思う。
馬鹿な考え方だよね」
「……」
「人は、三つ葉の中のほんの数個の四つ葉を見つけて喜ぶ。
けど、クローバーからしたら、四つ葉は異端な存在でしょ。
奇形ってことになるから。
でも人は、四つ葉を見つけると幸せそうに笑うの…あった」
ほらっと言って見つけた四つ葉を秦に差し出し、自然に緩む頬をそのままに、不思議そうな顔を見つめる。
「私にとって秦は、この四つ葉みたい。
今日も教室の窓から、秦の姿を見つけた時、すっごく幸せな気持ちになった…。
他の誰が異端だと言ったって、私にとって秦は、幸せで満たしてくれる存在。
秦はそれだけじゃ嫌?」
「いや…っじゃないっ…うれしい…」
秦は今までに見たことのない程の優しい笑顔で、四つ葉を大切そうに受け取る。
手を繋いで歩き出す。
二人して頬をゆるめたまま、幸せで心地の良い空気が満たす。
キュキューッ。
完全に雰囲気を壊すように勢いよくタイヤを鳴らして黒塗りの高級車が前方に止まった。
「っ!!」
驚くこちをよそに、素早く開いたドアからSPらしきスーツの男が三人降りて、こちらに駆けてくる。
反射的にかばうように私の前に立ち塞がった秦の背中を呆然と見上げた。