調導師 ~眠りし龍の嘆き~
‡〜始まり〜‡

やおら刀を自身に向けたかと思うと、そのまま躊躇なく腹に突き刺した。

「っうっ……くっう……なぜっ…」

瞬間戻された意識で己に問いかける。
腹から背を貫通して生える刀は、熱く脈打つ。
瞳の光りが消えていく。

「ふッ……」

そのまま崩れ折れ絶命する。
刀は、命を吸い取るように脈動を続けている。
赤い光は収束することなく灯る。



ちりりん。

ちりりん。



「何と……」

澄んだ鈴の音と共に、僧が一人歩み寄ってきた。
静かに手を合わせ、鈴の音よりも澄んだ音が辺りに響いた。
それは、僧の身体から発せられた音。

《……ぉぅ………ぅぅぇぁ…》

僧は美しい音を発しながら、そっと刀の柄に触れる。
力を入れてゆっくりと男の腹から引き抜き、大地に突き立てる。

《……ふぁぁぅぉ…》

刀の発した声と僧の音が交ざり合う。

《……ふぅぅぁぉ……》

何かが脈を打って大地に流れ込む。
それは、恨みの念。
染み込んだ血。
同心円状に波を作りながら、大地を這う。
赤い光りは、次第に弱まり、やがて脈動がおさまった刀は、本来の青い光りを宿していた。



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