調導師 ~眠りし龍の嘆き~
‡〜調導〜‡

「危ないっ!!」

隙を作る事になってしまった秦は、背中を切りつけられる。
浅く傷つけられた背中は、それでも血が滲んでいく。


〈ふひゃひゃひゃっ〉


これ以上血を吸わせてはいけない。
鎮めなくては…。
破調を正さなくては…。
何か手はないか…。
考えている間も戦いは続いている。
秦の身体には所々血が滲んでしまっていた。
その上、父親から受けた足の傷口が開いたのか、太ももが真っ赤に染まっていく。
一瞬よろめく。
とっさだった。
考える暇もなく、秦を庇うように両手を広げて間に滑り込む。

「くうッ痛っ…」
「美南都ッ!!」

応戦しようと突き出した水薙刀が背中から突き刺さり、秦めがけて突き出された龍牙刀が前から突き刺さる。

「美南都っ…!!」
「っ抜かないで…大丈夫っ…」
「みなとッ…」

今にも泣きそうな秦の声を背中で受け止め、大丈夫ともう一度呟く。

〈……〉

「狂気を鎮めよ。
己が…真の姿を…。
思い出せ…。
奏でるべき調べを…。
呼び戻せっ」

静かに身に受けた二本の刀が同調し始める。

目を閉じて語りかける。
「在るべき姿へ…。
聖なる刀…。
青龍よッ…」



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