調導師 ~眠りし龍の嘆き~
‡〜予感〜‡
日に日に温かくなってきた今日この頃。
過ごしやすい一日になりそうだ。
学校までの三十分程の距離を、ゆっくりと歩く。
自転車よりも、こうして歩く事の方が好きだ。
ゆったりと、次第に暖かく感じられる風を感じながら歩く。
二年間通い続けた学校への道は、もう意識しなくても辿り着ける。
教室に着くと、そこはいつにも増して賑やかだった。
「おはよう」
「おはよう、美南。
ねぇねぇ。今、さくらが持ってきた夢判断の本で、今日の私の夢を診断してたの」
「美南都の今日の夢は?」
「エ〜。
いやだなぁ〜。
ってか何見たっけか?」
本当は覚えている。
懐かしくて寂しかった過去の夢。
話したところで分からない。
今こうしている自分からは想像もできない残酷で冷たい過去。
「ははっ。
何て言うか、ある意味、美南都って裏切らないよね」
「どう言う意味?
それはっ」
「だって、予想通りっ」
「くっ…」
「ホームルーム始めます」
始業の鐘が鳴り、今日も一日が恙無く始まろうとしていた。
授業が始まっても、左から右へ。
聞くともなしに聞いていた。
どうにも、今日の夢が気にかかる。
本当に懐かしい夢だった。
祖父母に引き取られる前の記憶…。
あの人の声も忘れてはいない。
『シン』
きっと唇にのせれば、するりとこぼれ出るだろう。
懐かしい響きに心が奮えるだろう。
一人でいることに慣れていたあの時。
唯一、話しをする為だけに毎晩通ってくれた優しい人。
人としての色んなことを教えてくれた人。
あの人にあの晩出会えていなかったら、いつ巡り会う運命だったのだろうか。
あの運命がなければ、あの小さな部屋に一人寂しさを募らせ、正気ではいられなかったかもしれない。
『キーン、コーン、カーン、コーン』
何時間も過去に捕われ、意識が浮上したのは授業が全て終わってからだった。
「バイト?」
「…うん…」
まだはっきりしない頭で返事を返せば生返事になってしまった。
「「じゃあね」」
「うん。
また明日」
日に日に温かくなってきた今日この頃。
過ごしやすい一日になりそうだ。
学校までの三十分程の距離を、ゆっくりと歩く。
自転車よりも、こうして歩く事の方が好きだ。
ゆったりと、次第に暖かく感じられる風を感じながら歩く。
二年間通い続けた学校への道は、もう意識しなくても辿り着ける。
教室に着くと、そこはいつにも増して賑やかだった。
「おはよう」
「おはよう、美南。
ねぇねぇ。今、さくらが持ってきた夢判断の本で、今日の私の夢を診断してたの」
「美南都の今日の夢は?」
「エ〜。
いやだなぁ〜。
ってか何見たっけか?」
本当は覚えている。
懐かしくて寂しかった過去の夢。
話したところで分からない。
今こうしている自分からは想像もできない残酷で冷たい過去。
「ははっ。
何て言うか、ある意味、美南都って裏切らないよね」
「どう言う意味?
それはっ」
「だって、予想通りっ」
「くっ…」
「ホームルーム始めます」
始業の鐘が鳴り、今日も一日が恙無く始まろうとしていた。
授業が始まっても、左から右へ。
聞くともなしに聞いていた。
どうにも、今日の夢が気にかかる。
本当に懐かしい夢だった。
祖父母に引き取られる前の記憶…。
あの人の声も忘れてはいない。
『シン』
きっと唇にのせれば、するりとこぼれ出るだろう。
懐かしい響きに心が奮えるだろう。
一人でいることに慣れていたあの時。
唯一、話しをする為だけに毎晩通ってくれた優しい人。
人としての色んなことを教えてくれた人。
あの人にあの晩出会えていなかったら、いつ巡り会う運命だったのだろうか。
あの運命がなければ、あの小さな部屋に一人寂しさを募らせ、正気ではいられなかったかもしれない。
『キーン、コーン、カーン、コーン』
何時間も過去に捕われ、意識が浮上したのは授業が全て終わってからだった。
「バイト?」
「…うん…」
まだはっきりしない頭で返事を返せば生返事になってしまった。
「「じゃあね」」
「うん。
また明日」