調導師 ~眠りし龍の嘆き~
人間、どんな極限状態でも腹は減る。

それでも一週間何も食べずに過ごした。

ひたすら歩き続け、今どこにいるのかも分からない。

「お腹空いてるの?」

公園のベンチで寝転がり、お腹を鳴らしながら星空を見ていた。

声をかけてきたのは、短いスカート丈の女の子。

これが女子高生というものか。

妙な関心をしてしまう。

「これ、良かったらどうぞ?
コンビニの残りだけど」

起き上がり、三角に包装されたおにぎりを受け取る。

たどたどしく、開ける。

貪るように齧りついた。

「ふふっ。
よっぽどお腹が空いていたのね」

隣りに腰掛けて、食べる俺をおもしろそうに見つめる。

「いいのか…?
こんな時間に…」
「大丈夫。
私強いし」
「……」
「お兄さん。
泊まるところないなら、私の家にきなさいよ」
「なんで…?」
「寂しいから。
三ヶ月前にね、両親を亡くしたの。
一戸建ての家に一人って辛いのよ」
「…いいのか?
男だぞ?」
「むしろ、その方が都合がいい。
自分の身は守れるんだけど、最近ストーカーが何人かいて、一人ってのがちょっと不安なのよね」
「だが…」
「いいじゃん。
お兄さんは何か駄目な理由があるの?」
「いや。
別に…」
「じゃあ決まり。
いきましょっ」

少々強引な女の子に手を引かれ、案内された家は、確かに一人で住むには広すぎるかもしれない。

「入って」

恐る恐る上がると、かなりキレイだ。

「新築?」
「まだ五年は経ってないよ」

女の子は、素早くタオルや着替えを一式揃え、差し出した。

「はい。
お父さんの服だけど、合うと思う。
バスタオルとタオルはこれ。
お兄さんちょっと臭うから、先にシャワー浴びて」

てきぱきと浴室に案内すると、扉を閉めて、着替えるからと言って二階げ上がっていってしまう。

しかたなく、シャワーを浴びて着替える。

出てきた頃、ダイニングには冷たいお茶と、食べ物が置かれていた。

「それ食べて。
まだ食べられるでしょ?
私が今度シャワー浴びてくるから、テレビでも見ながらゆっくりしてて」

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