調導師 ~眠りし龍の嘆き~
第二章 月影に寄す
‡〜黒き訪問者〜‡
不可思議な体験をした日の夜は、中々寝付けないものだ。
いくら明日の朝が早くても、どれだけ睡眠時間が短くなると分かっていても。
自分ではどうすることもできない。
その上、今日は満月。
窓際のベッドで眠る者にとっては、遮光カーテンでもひいていなければ、月明かりが眩し過ぎる。
「っ???」
無理に閉じていた瞼に、ふと月が陰ったように感じた。
反射的に起き上がって目を向けると、そこには人影のように感じられるものがあった。
この時の人間の反応パターンは二つある。
一つは、恐怖のあまり動けなくなってしまうパターン。
二つ目は、ベッドから飛び出して窓から距離をとり、助けを呼ぶパターン。
しかし美南都には、そのどちらのパターンも該当しない。
ベッドの上で、いつでも対応できる姿勢を瞬時に整えると、カーテンを勢いよく開け、窓を乱暴にこじ開けた。
「誰だ!」
激しく叩きつけるように放つ声に、影の主は少し体を揺らす。
「何の用だ?!」
二度目の推何の声に動じることもなく、何者かはゆっくりと姿勢を立て直す。
次の瞬間、何かがこちらに目掛けて飛来した。
とっさに身体を傾け避けると、耳元で風を切るような音がかすめた。
トンッと避けた物が軽い音をさせて止まる。
いや、刺さった。
視界の端で捉らえたそれは、月光できらりと光る。
確認する為に反射的に首をひねろうとしたその時、またもや光る物が放たれた。
避けざまベッドから飛び降り、距離を取り体勢を整える。
二度目の足下に刺さったそれは、細いナイフだった。
「っ…昨今、殺し屋などは流行らないでしょうにっ…」
不可思議な体験をした日の夜は、中々寝付けないものだ。
いくら明日の朝が早くても、どれだけ睡眠時間が短くなると分かっていても。
自分ではどうすることもできない。
その上、今日は満月。
窓際のベッドで眠る者にとっては、遮光カーテンでもひいていなければ、月明かりが眩し過ぎる。
「っ???」
無理に閉じていた瞼に、ふと月が陰ったように感じた。
反射的に起き上がって目を向けると、そこには人影のように感じられるものがあった。
この時の人間の反応パターンは二つある。
一つは、恐怖のあまり動けなくなってしまうパターン。
二つ目は、ベッドから飛び出して窓から距離をとり、助けを呼ぶパターン。
しかし美南都には、そのどちらのパターンも該当しない。
ベッドの上で、いつでも対応できる姿勢を瞬時に整えると、カーテンを勢いよく開け、窓を乱暴にこじ開けた。
「誰だ!」
激しく叩きつけるように放つ声に、影の主は少し体を揺らす。
「何の用だ?!」
二度目の推何の声に動じることもなく、何者かはゆっくりと姿勢を立て直す。
次の瞬間、何かがこちらに目掛けて飛来した。
とっさに身体を傾け避けると、耳元で風を切るような音がかすめた。
トンッと避けた物が軽い音をさせて止まる。
いや、刺さった。
視界の端で捉らえたそれは、月光できらりと光る。
確認する為に反射的に首をひねろうとしたその時、またもや光る物が放たれた。
避けざまベッドから飛び降り、距離を取り体勢を整える。
二度目の足下に刺さったそれは、細いナイフだった。
「っ…昨今、殺し屋などは流行らないでしょうにっ…」