調導師 ~眠りし龍の嘆き~
「一族の者達のほとんどに何等かの影響を及ぼす刀が存在するのです」
「刀?」

一族の人間として、少しは力についての知識を持ち合わせている。

調刀の力。

刀の調べを聴く。

そして、刀の守り人。

「その刀は、強い力を秘めております。
持った者を狂わせるほどの…。
その刀の影響が屋敷にも広がっています」
「なぜ、わかるんだ?」
「大気が時折震えるのです。
感じます。
大きな力を。
一族を滅ぼすほどの」

いっそ、全てを滅ぼしてくれ。

忌々しい一族。

葬り去ってほしい。

「お父様…。
大丈夫ですか?
お顔の色がよろしくありませんわ」
「んっああっ。
大丈夫だ」

胸糞悪い。

さっさと滅んでしまえ。

早く。

「また参りますわ。
しっかりなさってくださいませね」
「ああ。
お前も気を付けて」

いつでも想ってくれる娘。

気遣いがうれしい。

けれどこの時。

失念していた。

娘が力を持つ者であることを。

力を持った者の身体が弱いことを。




何日経っても現れない娘。

あれほど頻繁に来てくれていたのに。


カチャカチャ。


鍵を開ける音が響く。

誰だろう。

娘ではない。

もう足音で分かるのだから。

これは違う。

今までのどの人にも当てはまらない。

とても軽い。

素早い。

若い。

「あなたが愛理様の父上か?」
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