調導師 ~眠りし龍の嘆き~
十数年の時は、大切な者を増やした。

愛する妻。

愛しい息子と娘。

そして、同僚や友人。

多くの大切な人が存在する。

たった数十年。

不思議に思う。

ついこの間までたった一つで良いと思っていたのに。

今、その全てが側にない。

それがとても不安だ。

永遠になくしてしまうようで。

もう二度と手に入らないようで。

一人が怖い。

大切な者が増える度。

弱くなっていく心。

臆病になっていく。

「人とは、厄介だな…」

改めて思う瞬間。

妻が以前言っていた。

生きるって大変だ。

人間は面倒な生き物だ。

「まあ、だからおもしろいのか…」

ここまで来ると、考え方が変わる。

全てプラスに。

ふっと心が軽くなる感覚。

全てはうまくいかなくてもいい。

その中の一つ二つ成功できればいい。

全て成功できる程、人間は有能じゃない。

失敗するから、後悔が生まれる。

後悔が次の成功に繋ぐ。

うまくできているじゃないか。

前向きに。

楽天的に。

「どうにかなるか…」

そして眠りにつく。

次に進む為に。

躓いている時間はないのだから…。
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