調導師 ~眠りし龍の嘆き~
数日後、慎太郎が報告にやってきた。

「愛理様が目を覚まされた。
今は身体も起こされている」

単調な物言いとは対照的に、その表情には喜びがあった。

「そうか…良かった」

安堵する。

失わずに済んだ。

悲しみを抱かずに済んだ。

嬉しい。

「…瓶の事はなにか分かったか?」
「ああ。
どうやら、長老達も混ざって試しているようだ」
「…いったい何を?」
「はっきりとは分からない。
だが、力を確実なものにする薬だと…。
部屋は研究室のようだった」

どう言うつもりだろう。

力を薬の力で確実なものにする…。

本当にそんな事が実現可能なのか。

兄が死んだのもその薬のせいならば、危険だ。

これ以上力の犠牲にさせてたまるか。

「…その部屋でしか薬は作られていないと言うことか?」
「確実とはまだ言えない。
何か考えがあるなら、調べてみる」
「頼む」
「他にはないか?」
「…揃えてもらいたい物がある…」

思案ののち申し出を素直に受ける事にした。

確実に潰すために…。




ドーンッ!!




地響きと共に爆発音が響いた。

地下にこれだけ響いたのだ。

少し威力が強すぎたかもしれない。

「まぁ。
問題ない」

込み上げそうになる笑い。

ばれてはいけない。

必死で笑いの衝動を抑え込む。

片方の口角だけが奇妙に上がった状態になってしまった。

慎太郎の調べで、調合法。

薬の材料。

それに関する資料。

全てが一つの部屋にまとまっていることが分かった。

密かに揃えさせた火薬。

その他。

爆弾の材料を調合し、作り上げた。

単純な仕掛けだ。

全て灰にできればいい。

火薬の量をある程度調整し、被害を最小限にとどめる。

少し派手だが、気が晴れる。

部屋には、多少の火種。

火薬類も保管されていることも調べた。

ただの事故として片付けられるだろう。

そのために、一番単純に作ったのだから。

「ふんっ。
いっそ、屋敷ごと吹き飛ばせたらすっきりするだろうに…」

想像するだけで救われる。

邪魔な奴ら全て吹き飛ばせたらいいのに。

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