After school【BL/mw】
「俺は櫻間じゃないよ」
視線の痛さに思わずそう言ってしまうと更にそいつらはザワつきだした。
そりゃあそうなっても仕方ないだろう。
まだまだ15歳とはいえ、体格だけでみれば俺の方がヒサギちゃんより大きいし、俺でさえヒサギちゃんを初めて見た時に女の子かと思ったくらいなのだから。
どこからどう見ても、不良をやっつけた(!?)のは俺の方だと思われるだろう。
それより、なんでヒサギちゃんはそんな事をしたんだろう……。
当のヒサギちゃんはというと、面倒臭そうな冷めた視線で最初に話し掛けて来たやつを見ていた。
「──えっ、こいつ!?」
「こんな女みてぇなヤツが櫻間なのかよ!?」
瞬間、ヒサギちゃんの目が鋭くなったのを俺は見逃さない。
「ヒサギちゃん、堪えて。殴っちゃダメだよ!」
咄嗟に俺は、ヒサギちゃんの前に飛び出していた。
入学式の日、俺がヒサギちゃんを「ちゃん付け」して呼んだ時の事を思い出したからだ。
──あの日、俺はヒサギちゃんに対してわざと『ちゃん付け』で呼び掛けて容赦の無い鉄拳制裁を喰らったのだ。
今ここであの時みたいに殴ってしまったら大変なことになるのは目に見えてる。
そんな俺の心配をよそに、ヒサギちゃんは俺をひらりと躱すとさもそうする事が当たり前かのように、極々自然な動作で「女みたいなヤツ」と言った他校生の胸倉を掴んでいた。