私んちの婚約者
鮮烈、婚約者
*
大学に着いて、私は愁也にお礼を言う。
「ありがとう、愁也」
車を降りるのが、ちょっぴり淋しくて、私はモタモタとシートベルトを外しながらつい彼の顔を見つめてしまう。
そんな私の視線に気付いて、愁也が苦笑した。
「そんな顔されると、我慢出来なくなるよ?」
止める暇も無くさりげなく伸ばされた手が私の顎を掴んで、愁也がキスをする。
「愁也……ここ、大学の門前だよ」
「うん、知ってる」
いやそうではなく。皆、見てるけどっ……。
コンコン、と窓ガラスを叩く音がして、
「すみませ~ん、そこのバカップルさん、ここでいちゃつくのは道路交通法違反なんですけど~」
そこにはニヤニヤと笑うマキと、微妙な顔した水樹君がいた。
「久しぶり、マキちゃん。そんな法律あるの?」
窓を開けた愁也が苦笑して聞く。
「お久しぶりです。お帰りなさい、愁也さん。そうですよ~今朝から施行された新法です。大学の前でいちゃつくの禁止!」
嘘だあ……。どっちかっていうとマキ様法だよね、それ。
水樹君は愁也に視線を向けられてビクッとしてる。ああ、前に威嚇されたんだっけ……憐れ、水樹君。
「さ、講義始まるよ、梓」
私は慌てて時計を見た。
「あ、そうだね。愁也、ありがとね。行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
振り返りつつ手を振れば、彼は優しく微笑んでいた。
すぐに、会える。
帰ったら、また、抱き締めるんだから。
何故か自分に言い聞かせるように、私は愁也に背を向けた。
大学に着いて、私は愁也にお礼を言う。
「ありがとう、愁也」
車を降りるのが、ちょっぴり淋しくて、私はモタモタとシートベルトを外しながらつい彼の顔を見つめてしまう。
そんな私の視線に気付いて、愁也が苦笑した。
「そんな顔されると、我慢出来なくなるよ?」
止める暇も無くさりげなく伸ばされた手が私の顎を掴んで、愁也がキスをする。
「愁也……ここ、大学の門前だよ」
「うん、知ってる」
いやそうではなく。皆、見てるけどっ……。
コンコン、と窓ガラスを叩く音がして、
「すみませ~ん、そこのバカップルさん、ここでいちゃつくのは道路交通法違反なんですけど~」
そこにはニヤニヤと笑うマキと、微妙な顔した水樹君がいた。
「久しぶり、マキちゃん。そんな法律あるの?」
窓を開けた愁也が苦笑して聞く。
「お久しぶりです。お帰りなさい、愁也さん。そうですよ~今朝から施行された新法です。大学の前でいちゃつくの禁止!」
嘘だあ……。どっちかっていうとマキ様法だよね、それ。
水樹君は愁也に視線を向けられてビクッとしてる。ああ、前に威嚇されたんだっけ……憐れ、水樹君。
「さ、講義始まるよ、梓」
私は慌てて時計を見た。
「あ、そうだね。愁也、ありがとね。行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
振り返りつつ手を振れば、彼は優しく微笑んでいた。
すぐに、会える。
帰ったら、また、抱き締めるんだから。
何故か自分に言い聞かせるように、私は愁也に背を向けた。