私んちの婚約者
*
講演は大絶賛で幕を閉じた。
あ、あんなんでいいんだ。世も末だなあ。
そもそもカイ兄は、うちの大学の学長の教え子で。この特別講演のオファーを受けて帰国したのだと、後から聞いた。
「俺はこのまままた海外飛ぶから。またな、梓」
講演を終えて、カイ兄は私にそう言った。
寂しい気もする。
あの写真は凄かったし、カイ兄を見直した。
けれど同時に、カイ兄はいつも危険と隣り合わせなんだってことも実感したから。
「あの小賢しい婚約者から乗り換える気になったら呼べよ?」
「そんな日はこないもん!!」
私が反応するより早く、カイ兄が私の頬にキスをした。
「!」
「ご馳走様」
このセクハラオヤジ!!
……でも何故か、もう憎めない。
「行ってらっしゃい、カイ兄」
また、会えるよね?
その背中を見送って、私はふと夢で見た彼の後ろ姿を思い出した。
でも、もう哀しくない。
あの時とは、違う。
それはきっと、愁也がいるから。
講演は大絶賛で幕を閉じた。
あ、あんなんでいいんだ。世も末だなあ。
そもそもカイ兄は、うちの大学の学長の教え子で。この特別講演のオファーを受けて帰国したのだと、後から聞いた。
「俺はこのまままた海外飛ぶから。またな、梓」
講演を終えて、カイ兄は私にそう言った。
寂しい気もする。
あの写真は凄かったし、カイ兄を見直した。
けれど同時に、カイ兄はいつも危険と隣り合わせなんだってことも実感したから。
「あの小賢しい婚約者から乗り換える気になったら呼べよ?」
「そんな日はこないもん!!」
私が反応するより早く、カイ兄が私の頬にキスをした。
「!」
「ご馳走様」
このセクハラオヤジ!!
……でも何故か、もう憎めない。
「行ってらっしゃい、カイ兄」
また、会えるよね?
その背中を見送って、私はふと夢で見た彼の後ろ姿を思い出した。
でも、もう哀しくない。
あの時とは、違う。
それはきっと、愁也がいるから。