私んちの婚約者
案の定、彼は辛そうに顔を歪めた。

ごめんね。

「俺じゃダメなのか?」

「うん。ごめん」

「即答かよ」

ごめんね。
私はあの男しか要らないの。

俺様で。
エロくて。
格好良くて。

「愁也が、好きなの」

ああ、初めて口にしたのに。
本人が居ないなんて。

「ダメダメだー……」

バカ愁也。
レアな梓ちゃんを見逃しやがって。

だから、言わなきゃ。

だってね?


彼は私の左薬指の指輪を外しはしなかった。


愁也のあの辛そうな目。あの優しいキス。全部信じるから。


「あなたはまだ、私のものなんだから」

そうじゃないなら何度でも、
恋に叩き落としてあげる。

……ちからずくで。


「よし!そうと決まれば、ぐじぐじタイム終ー了ー!!」

「は!?何がどう決まったんだ?」

急に立ち上がった私に、透也がビックリした顔を向けた。


「愁也を取り戻すんだから。透也、あんたも手伝うのよ!!」

「えぇええ~」

嫌そうにすんな!スネ男め!

私は透也を引きずって、ロイヤルスイートを出る。
美味しいご飯も、キングサイズのベッドも、後にして。


待っててね、愁也。


今、行くから。
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