私んちの婚約者
「会長、よろしいのですかっ……」
蓮也の戸惑った声。
珍しい、コイツがこんなに取り乱すなんて。
でもね~?
「蓮也、あんた一発殴らせなさいよ」
ボソッと言った私を、彼は目を剥いて睨んだ。
「なん……っ」
“ドカッ”
何か言いかけてたけど、その頬を私より早く、愁也が殴り飛ばした!
「梓にキスしたお仕置き」
えぇー私がやりたかったのにぃ。
愁也は会長を振り返る。
「兄弟喧嘩ってことで、多目に見て下さい」
会長は笑いをこらえているような顔で、頷いた。
そして。
愁也が私に手を差し伸べる。
「行くよ、梓」
騒然となった会場から、私と愁也は手を繋いで走り去って。
しばらくして足を止めた愁也が言った。
「駆け落ちみたいだな」
「あはは、そうだね」
笑い返して、今更自分のしたことを自覚する。手も足もガタガタと震えだした。
一歩間違えば、愁也も父も、傷つけてたかもしれない。……まあ父はいっか。
「梓、ありがとな。アンタやっぱ最強」
愁也が私の震える手を包み込んで、優しく笑った。
私はつい照れて、憎まれ口を叩く。
「ふん、情けない男共ねっ。私を敬って崇めなさいな!」
「相変わらずだな」
離れていたのは、そう長い期間じゃなかった。
だけど、つらかった。
世界の終わりみたいな気がしてた。
愁也、あなたが居なかったからだよ。
「梓、もう一度言って」
「何を?」
私の告白のことだって、わかってて聞き返してみた。
私だって、たまにはSっぽいこと言ってみたいもんね。
「……じゃあ言わせてやるよ」
愁也の手が私を引き寄せて、呑まれるようなキスが降ってくる。
うぅ、やっぱりS加減では勝てそうにない~!
「しゅ、愁也?」
息継ぎも出来ずに、私は彼を呼ぶ。
愁也は私の左手をとった。
そこに、光る指輪。
彼がくれた、婚約指輪。
「外されちゃったかと思ってた」
「外せないよ。愁也の気持ちでしょ?」
真っ直ぐ彼に微笑めば。
「梓、今すぐ帰ろう。俺もう我慢できない」
こらこら、何をだ。
「ここでしていい?」
だから何を!?ここ、天下のJRの駅前ですけど!!
赤くなったり青くなったりする私を見て、愁也が笑う。
ぜ、絶対からかってるよね?これ。その手に乗るか!!
「愁也こそ、私を色仕掛けで繋ぎ止めてみせてよ?」
仕返しに言ってみたならば。
彼はそれはそれは魅惑的に微笑んだ。
「へぇ、じゃあ全力でいくから、……後悔するなよ?」
「スイマセンっした!!」
はい、二秒で後悔しましたとも。
妖しい!妖し過ぎてむしろ怪しい!!
ぎゃあぎゃあと嫌がる私を愁也がタクシーに放り込んだ。
「帰ったら……今度は梓が恋の続きを教えてくれる?」
蓮也の戸惑った声。
珍しい、コイツがこんなに取り乱すなんて。
でもね~?
「蓮也、あんた一発殴らせなさいよ」
ボソッと言った私を、彼は目を剥いて睨んだ。
「なん……っ」
“ドカッ”
何か言いかけてたけど、その頬を私より早く、愁也が殴り飛ばした!
「梓にキスしたお仕置き」
えぇー私がやりたかったのにぃ。
愁也は会長を振り返る。
「兄弟喧嘩ってことで、多目に見て下さい」
会長は笑いをこらえているような顔で、頷いた。
そして。
愁也が私に手を差し伸べる。
「行くよ、梓」
騒然となった会場から、私と愁也は手を繋いで走り去って。
しばらくして足を止めた愁也が言った。
「駆け落ちみたいだな」
「あはは、そうだね」
笑い返して、今更自分のしたことを自覚する。手も足もガタガタと震えだした。
一歩間違えば、愁也も父も、傷つけてたかもしれない。……まあ父はいっか。
「梓、ありがとな。アンタやっぱ最強」
愁也が私の震える手を包み込んで、優しく笑った。
私はつい照れて、憎まれ口を叩く。
「ふん、情けない男共ねっ。私を敬って崇めなさいな!」
「相変わらずだな」
離れていたのは、そう長い期間じゃなかった。
だけど、つらかった。
世界の終わりみたいな気がしてた。
愁也、あなたが居なかったからだよ。
「梓、もう一度言って」
「何を?」
私の告白のことだって、わかってて聞き返してみた。
私だって、たまにはSっぽいこと言ってみたいもんね。
「……じゃあ言わせてやるよ」
愁也の手が私を引き寄せて、呑まれるようなキスが降ってくる。
うぅ、やっぱりS加減では勝てそうにない~!
「しゅ、愁也?」
息継ぎも出来ずに、私は彼を呼ぶ。
愁也は私の左手をとった。
そこに、光る指輪。
彼がくれた、婚約指輪。
「外されちゃったかと思ってた」
「外せないよ。愁也の気持ちでしょ?」
真っ直ぐ彼に微笑めば。
「梓、今すぐ帰ろう。俺もう我慢できない」
こらこら、何をだ。
「ここでしていい?」
だから何を!?ここ、天下のJRの駅前ですけど!!
赤くなったり青くなったりする私を見て、愁也が笑う。
ぜ、絶対からかってるよね?これ。その手に乗るか!!
「愁也こそ、私を色仕掛けで繋ぎ止めてみせてよ?」
仕返しに言ってみたならば。
彼はそれはそれは魅惑的に微笑んだ。
「へぇ、じゃあ全力でいくから、……後悔するなよ?」
「スイマセンっした!!」
はい、二秒で後悔しましたとも。
妖しい!妖し過ぎてむしろ怪しい!!
ぎゃあぎゃあと嫌がる私を愁也がタクシーに放り込んだ。
「帰ったら……今度は梓が恋の続きを教えてくれる?」