私んちの婚約者
「大丈夫。今日はずっと傍にいるから。腹減っただろ?ピザでもとる?」

ああ、食事のことを気にしてくれたのか……。

「んーと、作るよ。……私の数少ない取り柄だもんね?」

冗談めかして言えば、愁也の笑顔が返された。
……意地悪なほうの。

「いやいや、梓さんの取り柄は少数精鋭というか、一撃必殺というか。またバージョンアップされて精度が上がったようで?」

……それは褒めているの?
なんかすっげえモヤッとくるんですけどっ!?

だから私は、
愁也を見上げて。

「ふん。それにメロメロなのはだ~あ~れ?」

ニヤニヤ笑って憎まれ口を叩けば、彼はふ、と笑った。


「俺」


……まったくもう、アッサリと。こっちが照れるわ。

「そんなに殺傷能力があるとは思いませんでしたよ!」

「俺はいつでも全面降伏してるでしょ?」

「私勝ってんの?今勝ってるの??」

口を尖らせる私を見て、彼はクスクスと笑いながら手を伸ばしてきた。
なだめるように触れるけど、なんだか優しいんだかやらしいんだかわからない、艶めいた視線で。


「じゃあ、もいっかい威力を試してみない?」


愁也のキスが降ってきて。


結局、私達がご飯を食べられたのは、もっとずっと後のこと。
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