私んちの婚約者
動揺、婚約者
**

「……で?住み着いちゃってんの、スネちゃまは」

大学の中庭で、ランチ片手にマキに事情を話すと、彼女は呆れ顔で言った。

「愁也さん相当キてるんじゃない?」

うぅ。

「日に日に、ピリピリしてんのよおぉ」

もう一触即発って感じで、いつバトル勃発してもおかしくない。
透也もなんかワザと愁也につっかかってる気がするんだよね。
これはやっぱ、あれか。

「私を奪い合ってんのかな、とか」

「……」

「いや突っ込もうよ、マキちゃん」

寂しいじゃん。そして恥ずかしいじゃん。

「シャレにならないんじゃないの?あのおぼっちゃん、マジであんたに惚れてたじゃない」

マキはニヤニヤと私に言う。さすが恋愛大先生はゴシップ好きだ。

「そんな素振りないけど……」

「あんたが鈍感極トロだからでしょ」

うう。
どっちかってと、蓮也ラブだよね。
気持ち悪いくらいブラコンだよね。
てかもう病気だよね。

「それもオイシイ展開ね」

「マキさああん?遠くに行かないでー!?」

妄想世界に行っちゃいそうなマキ様にご帰還頂いて。
ランチを終えて講義室に戻ろうとした時、

「高宮」

私に課題を出した教授に呼び止められた。


「あのレポート良くできてたじゃないか」

う。

「あはは~そうですか?どぉも」

引きつった笑顔を浮かべて、冷や汗をかきながら教授を見送る私に、マキがボソッと呟いた。

「なるほどね。スネちゃま意外に役に立つってわけ」

「目先の欲に負けてすみませぇえん~!」

だってあいつ、私が三日間書けなかったレポートを、一晩で書き上げたんだもん!
あんな特技があったなんて!


「梓、あんたドツボにハマる前に何とかしなさいよ」

「……はい」


そして私は、後にこの時のマキの言葉を、嫌というほど思い知ることになる。


「愁也さんも大変だこと」

……マキちゃん?すごぉく楽しそうですけど……。
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