私んちの婚約者
いい加減混乱しまくった頭のまま、私は愁也の後を追う。

――鈍い音と、物が倒れる音。

部屋に入ればすでに愁也が透也を殴り倒した後だった。
なおも掴みかかって、再度殴ろうとする――

「待て待て、ロープ!ロープ!」

慌てて止めに入れば、愁也が物凄い形相で透也に吐き捨てた。

「根性無しのヘタレブラコンが。人の女を奪る度胸だけはあるってわけかよ」

ひいぃぃい!!
愁也さん!!恐すぎます!昔どこかでやんちゃしてましたか!!

透也は顔を背けたまま、一言も弁解しない。
それに顔を歪めて、愁也が私を見た。

「梓も梓だ。これでわかっただろ、コイツに関わるとロクな事にならない」

「や、あの透也のせいばかりでもなくてね?」

つい口を出せば、私が透也を庇うと思っていなかったのか、愁也が目を見開く。

あっ、誤解させたかも?
せ、説明!なんか言わなきゃ!……何を!?
わっかんねえぇぇ!!


脳内会議に失敗して、思わず黙ってしまった私を見て、愁也が苛立たしげに舌打ちして――。
乱暴に私の肩を掴んで、彼のベッドに押し倒す。

「ちょっ!ちょっと!?」

何してんの!?透也がそこにいますけど!!?

「愁也、ストッ……」

ストップ、と言えず、愁也が私の唇をキスで塞いだ。

マジ切れ、さっくりざっくりキレまくってる!!
どうしよ、どうしよ、――考えつかない!!
誰かこのイケメンを止めてくれ!!

「やっ、ちょっと、待ってって、ねぇ!?」

抗議やら懇願やらはまったく彼の耳には入らず、愁也の腕が私の両手首を頭の上でまとめて押さえつける。

うわああん!なんかまたスゴ技出たあぁ!

私の服を剥ぎながら、愁也が茫然としている透也を怒鳴りつけた。

「出てけっ!!!」

あっこら、そこで素直に引き下がるなああっ!!


顔を歪めて部屋を出て行く透也。
それを見もせずに私を組み敷く愁也に。


「――いい加減にせんかああっ!!!」


私はまさかの愁也相手に頭突きを喰らわせた――。
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