私んちの婚約者
外はもうかなり暗くなっていたけれど、透也はすぐに見つかった。
近所の公園で、ベンチに座って、所在なさげに溜め息をついている姿を見て。
私はゆっくりと近付く。


「蓮也兄さんに、梓。俺が振り向いて貰いたい人は、皆愁也を見てるな」

私に気付いて、自嘲気味に笑う彼の隣に座った。

「あんたが一番愁也を見てるのよ」

でなきゃあんな真似できるかっての。
ヘタなモノマネよりタチ悪い。

「そうかもな……」

同じ顔。だけど確かに違う人なのに。


「どんどん似せようとしてる自分がいるんだ。お前を好きになってから、特に」


……。

ん?

「……あ、びっくりした」

さりげなさすぎて、告白を聞き逃しかけたよ、今。


「びっくりすんなよ。俺、お前に惚れてる。知ってただろ?」

透也が苦笑して、もう一度繰り返す。


「お前のことが好きだ。……梓」


まっすぐに私を見つめて。

「……好きだ」

「うん」

「やっと言えた」

こんな時でも、泣きそうな顔で笑う透也。

「馬鹿。ヘタレ」

「だな」


やっと透也の顔で、透也の言葉で、気持ちを伝えてくれたんだよね。


「はあ、これで心おきなくがつんと振れるわ」

「振るの確定かよ」

がくり、と透也の頭が落ちて。
けれどもう一度上げた時には、意外にも清々しい顔をしていた。

そして私は、透也を真っ直ぐ見つめて口を開いた。

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