私んちの婚約者
急襲、婚約者
***
「あら、イケメン婚約者にお持ち帰りされた梓ちゃんじゃない」

週明け、大学でマキがニヤニヤと私を呼び止めた。


う。

休日に怒濤の様に入ってきたメールはロクに返せなかったから、問い詰められるのは覚悟してたけどっ。

マキはステップでも踏みそうな勢いで私に寄ってくると、片手を頬にあてて内緒話スタイル。
でも全く音量が落ちてません、マキ様。

美人さんも台無しのニヤニヤ顔で、楽しげに問われてしまう。


「でぇ?どーだったのよ彼は。……上手かった?」


マキのばかああっ。
いきなり核心つくなあああ!!

私は動揺を隠しきれなくて、つんとそっぽを向いた。

「マキさん、年頃の娘さんのくせに、はしたなくてよ!」

「今時の大和撫子はこういうスタイルなのよ」


んなわけあるか、嘘付きめ。


けれど親友という、私を知り尽くした彼女の追求から逃げられるわけも無くて、仕方なく降参する。眉を下げて答えた。


「わかんない」

「は?」

私の言葉に、マキは目を丸くした。


「覚えて、ない」


正直に言う。


「それはつまり、ヤッたのに、覚えてないと」


うぅう!
そんなわざわざ区切って言う事無いじゃん、マキの意地悪!

みるみるうちにマキの顔があきれ顔に変わった。
あんた何やってんの、ですね。ハイ。


「憐れだわ、婚約者さん……」


いや、彼はものスッゴく楽しそうでしたよ!?
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