私んちの婚約者
疑惑、婚約者
*side 愁也

電話を終えて、携帯をしまえば、まだレオナルドが梓に何か話していた。
彼女がレオナルドを睨みつけている。
噛みついたり、殴ったりしないだろうな。どうせなら代わりに俺がやりたい。

「シューヤ!」

話しかけてきた女性スタッフに失礼、と断って梓の傍へ戻ろうとした瞬間。
梓がレオナルドの持っていたワインをあおるのが見えた。

「――あの、馬鹿……っ」

とっさに梓の元へ走る。
彼女の身体がぐらりと揺れて、レオナルドが支えようとしたけれど、それより早く俺が梓の腕を掴んで引き寄せた。

誰が触らせるか。

そのまま梓は、伸ばした俺の腕の中に倒れ込んだ。

ふう、間に合った。
それにしても瞬間泥酔って。梓は体質的にアルコールがまわるようにできてるんだろうか。

覗き込めば、その顔がふにゃ~と笑って、細い指が俺のネクタイを掴んだ。

「しゅうやぁ……」

「あず、っ」

その指にグイッと引っ張られ、思わず下がった顔に、梓がキスする。


……相変わらず、気持ち良いな。んで、可愛いな。

積極的に攻められて、どうしようもなくイケナイ気分になりかけた、その時。

「……浮気、撲滅」

梓が呟いた。

……は?
寝ぼけてるのか?

聞き返そうとしたけれど、まわりが俺たちを見てどっとはやしたて、盛り上がって、梓の声が聞こえなくなる。

「ねぇ誰かビデオカメラ持ってない!?」

高宮社長――?
あのオッサンまたぶっ飛んでんな。
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