私んちの婚約者
長々と梓に応えてやっていれば、あちこちでカシャカシャと携帯カメラのシャッター音がする。皆ノリが良過ぎだ。
梓にちょっかいを掛けそうな男共にも、俺になんやかんやと寄ってくる女共にも、ちょうどいい牽制になるかもしれないと放っておく。

ああそうだ、良いのが撮れてたら後で送ってもらおう。
なんて考えていたら、梓の唇が離れた。残念。


「へ~え。アズサって意外と情熱的なんだ。ますます好み」

俺達の事を眺めていたレオナルドの、ニヤニヤ笑いが心底ムカつく。
梓を抱えてなかったら、そこの通りに放り出してやるのに。

「……ぅや」

だけど今は。
この可愛い生き物を他の男共から隔離するのが先だ。


「先に帰ります」

高宮社長に断れば、皆がニヤニヤと生暖かい目で送り出してくれる。全く、本当にノリの良い会社だ。


「まだ、食べるのぉ」

タクシーの中でも梓がむにゃむにゃ。


「……アンタは俺を喰っときな」


愛おしい彼女の耳に囁いて。

その唇に深く深くキスをした――。
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