私んちの婚約者
喧嘩、婚約者
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あ〜あ、帰りたくない。
けれど異国で夜にふらふら出歩くわけにもいかないし、泊らせてくれるような友人も居ない。
まだいいじゃーんとはしゃぐレオを蹴り倒して、夜も更けたホテルに戻れば、愁也が腕組みをして私を待っていた。


「遅い!言葉も地理もわからないのに、どこに行ってたんだ」

「言葉も地理も大丈夫だもん。子供じゃないんだから。レオとご飯食べてたの」

悲しくて寂しくてムカつく気持ちが渦を巻いて。
ついつい憎まれ口を叩く。

「レオナルドと?」

愁也が私へ近づいた。微かにピクンと眉が上がる。

「酒、呑んだ?」


レオに炭酸飲料と騙されて、スプマンテ――スパークリングワインを呑まされた。
割と早めに気付いたから、(でもひとくち目では気付かなかったんだけどさ)意識やら記憶やらが無くなるほどじゃない。

ただ、凶暴な気持ちだけがブクブク膨らんで。
結果、レオ相手に新橋のオヤジみたいに絡んで。

最終的には大暴れして店を叩き出された後、レオがホテルの前まで送ってくれたんだけど。
道中も散々悪態ついた気がする……。

……アイツ二度と私にお酒を呑ませようとは思わないだろうな。


けれどそんな言い訳も、愁也に通用しないのは分かってる。
だから黙って、ぷいっと顔を背けて口を尖らせた。


ーー後から考えれば、これがまずかった。
通用しないからといって、弁解をしないのは間違いだった。
私は、愁也に分かってもらう事を諦めちゃ駄目だったのに。
愁也のことを知る事も、怖がっちゃ駄目だったのに。
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