私んちの婚約者
*side レオナルド

一方的にブチッと切られた電話を見つめて。

「やっぱり面白い子だなあ」

女の子からこんな扱い、受けた事無いよ。
そう思ってクスクス笑っていたら、後ろから声がかけられた。

「随分楽しそうね、レオナルド兄さん」

僕のプライベートオフィスの入り口に立っていたのは、愛しい妹。
金色の髪を綺麗に巻いて、綺麗な色のワンピースを着ているのはシューヤの為かな。

「やあマリア」

クルリと椅子を回して向き直ったなら、彼女は腕組みをして僕を見た。

「さっき、アズサって聞こえたんだけど。兄さん、アズサにちょっかいかけてるの?」

「まあね。いいだろ?君の邪魔なライバルは減るし、僕は可愛くて面白い子が手に入る」


最初はマリアを泣かせたシューヤに仕返しをするつもりだった。

あいつの大事な婚約者とやらを奪ってやったら、どんな顔をするかって。
けれど、アズサは予想外に魅力的な子で。

「本気で欲しくなっちゃったんだ」

「兄さん、私シューヤが苦しむのは嫌よ」

この年の離れた妹は、時々僕より大人びたことを言う。
兄がいい加減だと妹はしっかりするのかな。

「あんな浮気男はオススメできないなあ」

「兄さんみたいな、典型的なイタリア男に言われたくないでしょうよ」

確かに恋多き男な僕。

「でもあいつみたいにコソコソして、彼女を泣かせたりはしないよ」


「それ、どういう意味?」


うわ、噂の元、登場。
シューヤがオフィスのドアに寄りかかって、こちらを睨んでいた。
漆黒の目で見られると、ものすっごく恐いから止めて欲しい。

「レオナルド、昨日仕事サボって何してたわけ?」

「ふふん、君だろそれは」

「俺はちゃんと休暇申請してたよ」

僕だって『計画的に』風邪をひいたんだ。
シューヤはそんな言い訳も聞かずに、僕を睨みつけて聞いてくる。

「で、誰が浮気したって?」

「誰って、君だろ?いいって僕は気にしないから。アズサのことは任せて」

軽く言ってやれば、シューヤが怪訝な顔をした。

「何を言ってるんだ?」

ん?

お互い話が微妙にズレていることに気付く。
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