私んちの婚約者
カイ兄をその場に残して、私は愁也と二人、花のアーチの下を歩く。

「まったく……ドレスといい、式場といい、サプライズにも程があるよ!」

人生の一大事だっての!
私の抗議なんて、全然耳に入らないこの仕掛け人は、楽しそうに笑った。

「いや、梓の驚く顔が見たくなって。なかなか可愛かったしな」

くぅ、なんでもかんでも褒め言葉でごまかされるもんか!身がもたんわ!


「愁也は私の心臓を壊すつもりなの?」

軽く睨めば、優しい笑みは妖しい笑みに変わる。


「俺はずっと前から梓に、心臓ぶっ壊されてるからな。お互い様」



ご、ごまかされてしまうかも。

彼の言葉に思わず赤面すれば。
愁也はニヤリと笑った。

「……言っとくけど、式はともかく、披露宴は慎ましやかになんて言わないからな。思いっ切り盛大に、社員全員にアンタが俺のものだって、知らしめてやる」

「また俺様発言……!!」

一体何人の招待客なのやら。


……まあいいか。
ついでに女子社員にも、愁也が私のものだって、知らしめてやるんだからね。覚悟しといてね?


愁也の手を握り締めて、私は教会の鐘を眺める。

「幸せに、してもらおうじゃない。で、私も愁也を幸せにしてやるんだからね」

彼が微笑んで。
また唇に降ってくる甘い返事に、私は目を閉じた。
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