私んちの婚約者
「まったく、油断も隙もねぇな」

「えぇ~」

まわされた腕を軽く叩いて抗議すれば、もっと強く抱き締められた。


「アンタは目を離すとすぐコレだ。結婚してもあちこちと口説かれまくって。もー閉じ込めておきたいよ」

と、とんでもない言い分だ。

「みんなからかってるだけか、マルコのは子供の憧れでしょ。誤解だっての!」

「はあん?じゃあジョンは、アレックスは、フランチェスコに、レオンにエンリケは!?俺がどれだけ苦労してると思ってるんだ」

「それをゆーなら、メリッサにシンディにメイリンにアイシャは!?多国籍に色々引っかけやがって!!」

「そんだけ言い寄られても、俺はずっと梓一筋だけど?」

「私だってそうだよ、ヤキモチモテ男め!!」


……あ、あれ?
喧嘩してる場合だっけ。ていうか喧嘩か?これ。

どちらともなく、ぷ、と吹き出して。
唇を寄せて、キスをする。


「……検診の時間」

「男の子かな、女の子かな~」

私の言葉に愁也がにっこりと微笑む。


「男でも女でも、梓そっくりな子がいいな」

「愁也そっくりの腹黒な美人さんかも~」


二人で一緒に手を繋いで。

少し先の幸せを想像して。


甘いキスを繰り返した――。





~fin~
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