私んちの婚約者
ランチをほおばりながら、あたし達は自然と梓の話題になった。

「梓は留学扱いだから、あっちでちゃんと試験に受かれば教員免許をもらえるのよ。そのままイタリアで教師をやるのかもね」

透也は顔をひきつらせて言う。

「ほんとにあれが先生になるのかよ……」

あはは。
まあ気持ちはわかるけどさ。

「梓はあたしなんかよりよっぽど教師に向いてるわよ。まっすぐで警戒心なくて、だから警戒もされない。まあ短気は良くないけど、面倒見もいいし」

「そうだな」

あ。

懐かしそうに、切なそうに笑う透也。その表情に、ちょっと胸が痛む。
梓のことが好きだったんだもんね。

「泣くな、泣くな。もっといい子が現れるわよ。なんなら合コンする?」

あたしはポンポンと彼の肩を軽く叩いてやった。

「泣いてない!」


ムキになる彼はからかいがいがある。ついつい苛めたくなっちゃうのよねぇ。
愁也さんだと逆にこっちが苛められそうな雰囲気なのに。

と、その時。


「あれ~、マキちゃんじゃん。新しい男?」

「また合コンしよーよ」

出た。別学部のチャラ男部隊。
『新しい男』の前で合コンのお誘いなんてデリカシーが無さ過ぎるとは思わないのだろうか。

「あんたらはもう呼ばないわよ。自分が何したかわかってんの?」

こいつらは合コンで気に入った女の子を酔いつぶして、無理矢理コトに及ぼうとしたんだ。
幸い未遂で済んだものの、あたしは許せない。

「あたしそーゆーの、心底ムカつくのよね」

蔑みの目で睨みつければ、彼らはヘラヘラと笑った。


「どーせあっちも男漁りに来てるんだろ。楽しもうとしただけだよ。マキちゃんもでしょ」

不意に肩を抱かれてビクン、と身を震わせた。
軽々しく触んな!キモイわ、バカ共!!

思わず梓直伝のパンチをたたき込もうとしてーーあたしの肩にあった手が振り払われた。
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