私んちの婚約者
「いってぇ!」

「お前ら、バカ?マキはそんな女じゃねぇよ。侮辱するな」


冷たい目で、あたしに触れた男の腕をねじり上げ、彼らを見下ろすように睨みつけるのは――透也。


「え……?」


その迫力は、圧倒的で。

普段はヘタレのニートもどきなくせに。
今の姿はまるでその場の支配者みたいだ。

神前蓮也や、神前会長と同種の、圧迫感がある。

ーーまっすぐで強い意志の瞳。


“どっくんっ!!”


と心臓が音を立てた。
あたしは思わず胸を押さえる。
あれ?ちょ、ちょい待ち。

「マキに触るな」

透也に睨まれたヤツらはしぶしぶ逃げていった。
根性ないなあ、ふん。

「乱闘にすらならないのね。さすが現代っ子……」

つまらないことを考えていると、透也があたしを覗き込んだ。

「大丈夫か?」

「ひぇっ!?え、ああうんっ」

至近距離の透也はやっぱり整った顔立ちをしていて、アップで近寄られると余計心臓に悪い。
さっきのどっくん、を思い出す。

あたし、変だ。顔熱いし、なんか変な汗が。


いやいやいや、うそでしょ。
あたしのタイプはワイルド肉食系男子よ。そう、甲斐様みたいな。
こんな、優しくて、紳士的で、甘っちょろいんじゃなくて!
(しかも親友の旦那様とそっくりな男なんて嫌すぎる!!!)
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