私んちの婚約者
皆さん、こんにちは。
ただいま秘書室の前へ来ております。
おや、中には社長秘書の神谷氏と、総務の三崎さんが居る模様です。
「天野と梓さん、うまくいったみたいですね」
神谷氏、三崎さんに笑顔を向けております。
妙に胡散臭い笑顔だと思うのは私だけでしょうか?
「寂しいですか?天野の元彼女としては。ねぇ三崎さん」
おおっと、デリカシーのない質問ですね。
おそらくこれはワザとでしょう。
しかし三崎さんも負けてません。ニッコリ笑って答えます。
「いいえ。でもそんなこと仰るなんて、性格が悪いですね、神谷さん」
今日は天野チーフが遅れて出社してきたようですね。
彼の様子を見て、梓嬢との進展があったことを容易に察したようです。
「三崎さんにもおわかりですか」
「……だって愁也、天野チーフが浮かれてるもの」
おおっと。女性の勘でしょうか……。
見た目には全くわかりませんでしたが。
神谷さんが眉をあげています。
「さすが“元カノ”ですね」
おおっと、ノンデリカシー増量発言です。
「私と付き合っていたときには、彼のあんな姿を見たことないから、です。……本当に性格悪いですね、神谷さん」
ちょっと寂しそうな三崎さんですが、やっぱり神谷氏にイヤミを言うのは忘れておりません。
「梓さんは、やっぱり凄いです。二人には幸せになってもらいたい。神谷さんはそう思わないんですか?」
さすがマドンナ三崎。サッパリした大人の女性です。
ふと神谷氏が笑いを含んで三崎さんを見ております。
「性格の悪い男はお嫌いですか?」
「さあ、どうでしょう」
言葉遊びは続行のようです。
三崎さんも、もはや慣れたのか、ごく軽~く答えております。