私んちの婚約者
「あれ?でもさあ、この女の子……。年上じゃない?」

愁也の写真を覗き込みながら、私はふと気がついた。

最近の写真と勘違いしたのは、彼女が私と同じ歳くらいに見えたからだ。
彼は視線を宙に浮かせて、言いづらそうに口を開く。

「あー、うん。
当時うちに家庭教師に来てた女子大生……」

「家庭教師とイケナイお勉強か!この生涯モテ期め!!」

私はフルフルと拳を固めて愁也を睨みつける。
だからさっき『しまった』って顔をしたわけね!


「色々と好奇心旺盛なお年頃だったんだよ。若気の至りってことでそこはオトナ的に流してくれないかな」

私からジリジリと避難し始める愁也をジトリと睨みつけていたなら。


「たっだいまー、梓ちゃん、愁也クン!」

テンションMAXなオッサン……うちの父が豪快に扉を開けてのたまった。
私はそちらにチラリと視線を投げる。

「うっさい、父!今ちょっくら判決前の審議中だ!」

「梓ちゃん、冷たい!パパ三ヶ月ぶりの帰国なんですけどー」

さめざめ泣く父は放置して、私は愁也に迫る。

「だいたい愁也ってば、本当はオトナっぽい人がタイプなんじゃないの?あの元カノ三崎さんとかさー」

「妬いてくれるのは嬉しいけど、今の俺はあんたで手も頭もいっぱいだっての。冷静なジャッジをお願いします」

私の手に握られたピコピコハンマーを、警戒を込めてチラチラ見ながら両手を挙げて降参する愁也に、私が疑わしげな眼差しを向けた時。
父が思い出したように私に顔を向けた。


「あ、梓ちゃん。君バイトしない?

ーー男子高校生の、家庭教師」
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