私んちの婚約者
そうだった、彼はそういう人だった!

私のピンチには、駆けつけるーー、たとえそれが、自力で何とかできる思いっきり些細なものでも、だ。

「こうなるのを心配して、家庭教師先は父に口止めしたのに!なんで個人宅の、しかも個人の部屋まで入ってこれちゃうの!?
まさか軽く片手で数えられるくらいの犯罪を犯して無いでしょうね!」

睨みつける私に、彼はいっそ殺意が芽生えるほど爽やかに笑った。

「え?
社長は自分から教えてくれたし。ここんちの奥さん、快く入れてくれたけど?」

奥さんはともかく、父のことは、絶対脅したに違いない。
い、イケメンはストーカー行為すら許されるのか……!

がくりとへたり込んだ私の前で、愁也は隼人に笑顔で迫る。

「俺、基本的に老若男女差別しないつもりだから。高校生だろうと全力でーー潰すよ?」

「NOぺちゃんこ!!差別はともかく区別してよね!」


ぶ、ブラック愁也様が降臨してるーー!!
愁也の底知れない迫力に、哀れ隼人少年は、みるみるうちに青ざめて。

「いやあの、そーじゃなくて!」

ブンブンと首を横に振った。
ああ、なんか可哀想になってきたぞ。

「可愛い梓にちょっかいかけるつもりじゃないの?なら恋愛のお勉強か。
じゃあ俺と梓がじっくりゆっくり実演付きで教えてあげましょう」

「って、ナニ見せる気だーー!!」

そう言って私を抱き寄せる愁也の顎に鉄拳を喰らわせた。
全く、おとなげないにも程があるわ!
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