私んちの婚約者
目の前の彼女はとても大人の美人で。
優しげな雰囲気はとてもじゃないけど、私には皆無で。
何だか良い匂いとかもするんですけど!

思わず彼女を凝視してしまった私に気付いたのか、愁也はチラリと私を見て。
改めてユウリさんに向き直った。

「久しぶり」

彼がユウリさんに向けた柔らかな笑みに、チクリと胸が痛む。
ーーどんだけココロ狭いんだ、私は。

だって。
だって私には、皮肉気に笑うのに。
私のことなんて、なんでもお見通しって自信気に。

そんな優しい顔をしないでーー。


ユウリさんは嬉しそうに愁也を見上げて笑った。

「本当、久しぶりね!でもどうして」

その言葉と共に、彼女の目が私に移った。
私は視線が泳いでしまう。
なぜか、見られたくなくて。

く、なんか通信講座とかで、イキナリ透明になる忍術とか取得しとけば良かった……!(そんな講座はありません)


どうする?
愁也の婚約者って、名乗ってもいいの?

私が、そう名乗っても、
ーー愁也は、いいのかな?
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