私んちの婚約者
***

「あんたはさー。普段強引で無鉄砲なくせに、なんでたまにすげえ弱くなるんだよ?」

帰り道、愁也は私の手を引いてそう言った。

「俺って信用されてないのかなー」

「そうじゃなくて!ただヤキモチ焼いただけで!」

慌てた私の口から飛び出した言葉に、満足そうに目を細める彼。
う、はめられた!

「へーえ。
所構わずヤキモチ焼いちゃうくらい、梓は俺に惚れてるってことだよな?
そーだよなー、昔の写真やラブレターにまで妬いてたもんな」

ニヤニヤとそう言ってくる彼に、なんだか思いっきり頭突きしたいのは私だけ?

わざわざそんなのキャッチせんでいい!
小さいうちにリリースしとけ!

思わず戦闘態勢に入ろうとした、その瞬間。


「不安にならないでよ」


私は愁也に、ぎゅっと抱き締められた。


「ーー好きだよ」


ーーずるいよ。


そんな、かすかな声で。
聞かなかったことに出来るくらい、何気なく。
だけど聞かなかったことに出来ないくらい、魅力的な言葉を落として。

聞き返したく、なるでしょう?


「今なんて言ったの」


答えが分かっていて、私は聞いてしまう。

案の定、愁也はにこりと私に顔を近づけて、甘い声で囁いた。


「聞きたかったら、いつもの。
ーーね?」


『俺を色仕掛けで、繋ぎ止めてみせろ』
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