私んちの婚約者
私と愁也が結婚して二年――。
私は大学の卒業式のために、愁也と一緒に日本に帰国していた。

「マキ~!」

空港に迎えに来てくれたマキに、私は思いっ切り抱き付く。
マキは笑ってハグし返してくれた。

「珍しい組み合わせ」

私の後ろから来た愁也が言う。
そう、マキと一緒に来てるのは。

「透也も久しぶり。マキと来てくれたんだ」

彼が大学で助手をしてる、っていうのは聞いてたけど。

「あ、ああ」

「うん、まあ」

歯切れの悪い二人を見て、愁也は軽く目を見開いて、

「ふ~ん」

とニヤリと笑う。

「どうして一瞬でバレるんだ……」

透也が何かブツブツ呟いてたけど、私はよくわからずに首を傾げていた。


**

「透也と、付き合ってる!?」

思わず大きな声を上げれば、マキは慌てて私の口を塞いだ。
女子の作戦会議室、トイレにて。
私は衝撃的な報告を受けていた。

「ち、違うのよ!付き合ってるとまではいかなくて、なんかイイ感じではあるんだけど、イマイチちゃんとハッキリしてないっつーか」

ぶちぶちと言う彼女は、今まで見たこと無い乙女な姿。
なんだなんだ。これ誰だ。


「それに、あいつ大学で激モテでさ。なんかこう悔しくて、もう絶対こっちからは告うもんかって……」

マ、マキちゃんが乙女な顔してる……っ!
なんだかショック。

とんでもない事態に、私は頭を抱えて叫んだ。

「いやああー!マキちゃんは私のぉお!透也なんかにあげないもんっ」

「人妻のクセに何言ってるのよ」

あ、いつものマキ様だ。
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