私んちの婚約者
side透也
「いや、梓は相変わらずのムチャクチャっぷりだよなー」
俺はマキを振り返った。
愁也と梓と別れて、マキを送る帰り道。もう何度も一緒に歩いた道だ。
だけどマキはさっきまで梓に見せていた笑顔を引っ込めて、少し固い表情で俺を見た。
「あのさ、梓に会って、どうなの?」
「は?」
問われた意味がわからずに聞き返す。
「まだ、梓のこと……好き?」
俺はポカンと口を開けてしまった。
……は?
「……俺そんなこと言ってないよな」
ちょ、ちょっと待て?
「でもあんなに好きだったじゃん」
マキの顔からどんどん表情が無くなっていく。
「俺、もう梓にそういう気持ちは無いよ」
「じゃあ誰か他に居るの?」
「……俺この一年半、結構態度に出してたと思うけど」
マキへの気持ち。
聡いこの女が、全然気づかない筈がない。
「……あんた誰にでも優しいじゃん。天然タラシだし」
俯いて言われた言葉。
ていうか、こいつがそんなことを気にしてるなんて思わなかった。
「……お前、イイ歳した男が、ホントに全部計算無しの天然で行動してると思ってんの?」
軽く苛々として言えば、マキはこっちを見た。
バカ。
なんでそんな心細げな顔してんだ。
お前の取り柄はいつだって強気で颯爽としてるとこだろが。
「俺は、お前を、口説いてきたつもりなんだけど」
強調して言う。
梓達と離れて、マキと居る時間が増えて。
彼女への気持ちを自覚してからは。
――『お前が告ればいいことだろう』
『ちゃんとしなさいよ』
愁也と梓に言われたセリフを思い出す。
「いや、梓は相変わらずのムチャクチャっぷりだよなー」
俺はマキを振り返った。
愁也と梓と別れて、マキを送る帰り道。もう何度も一緒に歩いた道だ。
だけどマキはさっきまで梓に見せていた笑顔を引っ込めて、少し固い表情で俺を見た。
「あのさ、梓に会って、どうなの?」
「は?」
問われた意味がわからずに聞き返す。
「まだ、梓のこと……好き?」
俺はポカンと口を開けてしまった。
……は?
「……俺そんなこと言ってないよな」
ちょ、ちょっと待て?
「でもあんなに好きだったじゃん」
マキの顔からどんどん表情が無くなっていく。
「俺、もう梓にそういう気持ちは無いよ」
「じゃあ誰か他に居るの?」
「……俺この一年半、結構態度に出してたと思うけど」
マキへの気持ち。
聡いこの女が、全然気づかない筈がない。
「……あんた誰にでも優しいじゃん。天然タラシだし」
俯いて言われた言葉。
ていうか、こいつがそんなことを気にしてるなんて思わなかった。
「……お前、イイ歳した男が、ホントに全部計算無しの天然で行動してると思ってんの?」
軽く苛々として言えば、マキはこっちを見た。
バカ。
なんでそんな心細げな顔してんだ。
お前の取り柄はいつだって強気で颯爽としてるとこだろが。
「俺は、お前を、口説いてきたつもりなんだけど」
強調して言う。
梓達と離れて、マキと居る時間が増えて。
彼女への気持ちを自覚してからは。
――『お前が告ればいいことだろう』
『ちゃんとしなさいよ』
愁也と梓に言われたセリフを思い出す。