私んちの婚約者
俺がちゃんと言わなかったせいで、ずっと不安にさせてたのかな。


「お前、俺のこと好きなの?」


あ、いやそうじゃないよな。
つい順番を違えて言ってしまえば、マキの顔が一瞬で真っ赤になった。


「知るか馬鹿!!だからあんたはタラシだってのよ!!」


彼女は身を翻して、その場から逃げようとする。

逃がすか。
俺はマキの腕を掴んで引き寄せた。

今を逃がしたら、意地っ張りのコイツと優柔不断の俺に進展なんて望めない。
そしてまた、マキに不安を与えることになる。

……それくらいの自覚はあるんだ。


「俺は好きなんだけど。お前のこと」


マキの目が大きく見開かれた。



「……遅いのよ、馬鹿」


潤む瞳と、赤く染まる目元がたまらなく綺麗で。
俺はマキを抱き締めた。



「でもあたし、あんたより梓が一番だから」

「ですよねー……」



腕の中で呟かれる、可愛い憎まれ口に。

俺は思わず笑ってキスをした。

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