私んちの婚約者
それを眺めていた透也が呆れたように言う。

「……お前、教授にまで嫉妬するのかよ」

「どう見ても梓に気があるだろ、あの童顔教授」

やっぱり、ヤキモチ!?
嫌な予感が当たった私は顔を引きつらせた。

「それはお前の考え過ぎだろ……」

そうだそうだ、透也もっと言ってやれ!


「――マキちゃん」


愁也の口から出た名前一つに、透也が固まった。
一気にその顔が赤くなる。
異母弟の様子に愁也が意地悪く笑った。

「ふーん。上手くいったんだ」

「えぇえ~!?」
いつの間にぃ!?


「……だから何で一瞬でわかるんだ」

ぶちぶち言う透也に、愁也が視線を向ける。

「見ればわかるんだよ。お前のことも、あの教授のことも、な」

忌々しげに吐き捨てた。
そんな彼に困ったもんだと歩き出せば。

「あ~、梓!?」
「高宮ちゃんだー!」
「あれ、梓!?久しぶり」

続々と私に掛けられる言葉。
同じゼミじゃなかった子まで笑顔を向けてくれた。
それが嬉しくて、胸を撫で下ろす。

「良かったあ、私の存在を忘れられてるかと」

「……梓みたいな子、そうそう忘れられるはずないと思うけど」

愁也がぼそりと呟く。
はい?どゆ意味よ。

「見た目は可愛い。化粧すると凄い美人。口の悪さは天下一品。社長令嬢のくせに食い意地は人一倍。気に入らなければ即殴り倒す。
インパクトありすぎだもんな」

「え~」

それが可愛い奥さんに言うセリフ?
しかも愁也の形容に、透也がこれまたうんうんと頷いてる。

「そんなことないよ」

「「ある」」

私は口を尖らせて抗議するも、ふたりがかりで却下された。
< 257 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop