私んちの婚約者

梓、はいぱーピンチです。


後ろで縛られた手と。
同じくガッチリ縛られた足。
よく見ればおそらく大学構内の、使ったことのないナントカ準備室の端っこ。
車とかで遠方に拉致されたんじゃないことには安心しつつも、さて、この状況。

「これって監禁ですかー!」

「た、高宮さん、落ち着いて」

男子学生がオロオロと言う。
やべ。負ける気がしねー。

「梓ちゃん、騒いでもどこにも届かないよ。ここ、特別棟だから」

私を殴ったあの男がニヤニヤ笑いながら言った。

「それよりお菓子でも食べない?」

う。私の好きなサワークリームオニオンのポテトチップだとぉ!?
やべ、勝てる気がしねー。


「……食べるから縄ほどいてよ」

「それはダメ」

ちっ、引っかからないか。
私は諦めて息を吐く。


「目的は、何なわけ?」

視線を向けたらば、気弱そうな男子が顔を背ける。

「や、俺達は、あいつの言うこと聞けば高宮さんと付き合えるって」


……は?
ちょっと待て。

「よぉく考えましょ~ね?
私は1人。あんたら7人。どーやって付き合うの?そもそも私は結婚してんだぞ、この馬鹿ども」


あ、後半本音出ちゃった。
気弱男子はえ?てな顔で私を見る。ダメだこりゃ。

多分、リーダーはアイツ。
私を殴った男。

猿山のサルはボスがいなきゃ何もできない。
つまりアイツをぶっ倒せば、後はなんとかなりそうだ。


私は周りを見回す。
武器……はもちろん無いし、私の“御守り”達も無い。
バッグは中身が出されて無造作に放ってあった。
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