私んちの婚約者
目に入った私のバッグには、可愛らしいモチーフのアクセントがついていて。
それは旦那様からのプレゼントだったりする。


『危ない時はこれ押せよ。ヒーローが助けに行くから』


これをくれたときに言われた愁也の言葉を思い出し、後ろで縛られた手を必死で伸ばして。
そこについた蝶のブローチの裏にあったボタンを“ぽちっ”と押すと。


……。
……。

何にも起きないじゃん。

変形合体ロボットもでなきゃ、ミサイル発射もない。
催眠ガスも出ないし、ヒーロー戦隊も現れない。

ええぇ~!?
なんなのこの期待裏切られました感はぁ!?

これ何なんだろ。


「おい、何したんだ」


私の動作に気づいた男が立ち上がった。

「勝手なことしちゃダメでしょ、梓ちゃん。何したって、あの男は来てくれないよ?」

頬を撫でる手にぞわっと鳥肌。

「あんなとこでキスしちゃって、俺達みんな妬いてたんだよ?」

じりじり近づく男に、私もじりじり後ずさる。
背中に壁が触れた。

このボス猿に触発されたのか、他の男共も口々に同じ様なセリフを吐く。

「高宮さん、騙されてるんだ」
「君はみんなのものなのに」

う~。ダメだも~!
殴りたい!
力いっぱい殴り倒したい!

「あんな男、君にはふさわしくないよ」

ボス猿の手が私の肩を壁に押し付けた。
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