私んちの婚約者
***
あの場を透也と、駆けつけた警備員に任せて。
私は愁也と家に戻ってきていた。

「何であそこに来られたの?」

いくら愁也が無敵のヒーローでも、よくあんなとこがわかったもんだ。


「透也から梓が危ないかもって連絡をもらって、大学に来てたんだ。そしたら、これが鳴ったから」

愁也が示したのは携帯サイズの機械。
画面に点滅するライトと、大学の見取り図?
スパイ映画みたいだ、カッコイイ。


「梓に渡したブローチ、うちの会社と神前の関連会社が共同開発した、超高性能発信機なわけ。
ボタンを押せば、これに緊急信号が発信される」

……うちの会社は一体、なにをやってる会社なんでしょうか?

『愁也君が副社長に就任してから、異様に業務内容がグローバルになったんだよね~』
とか言ってた父を思い出す。

グローバルって域ではないよ~な。
秘密兵器とか作ってないでしょうね。
しかも大学の見取り図って。どこで手に入れたんだ。

……我が旦那様ながら、あらゆる意味で有能なこの人がコワイ。


「そんなことより、梓があんなふうに思っててくれたなんてね」

愁也がニコニコと私を見た。

「は?」

「熱烈な告白をしてくれたじゃないか。スケールでかい宇宙規模の」

ああ……。
世界一とか宇宙一とか言ったな、確かに。
今思えば小学生みたいで恥ずかしい。


「言葉のあやですよぅ!」

顔を背けて言う。


けれど、からかわれるかと思いきや、愁也はニヤニヤ笑いを浮かべることなく、私の体を抱き締めた。


「……ほんっとに、無事で良かった」


囁かれた言葉に、私は戸惑う。


「愁也?」
< 269 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop