私んちの婚約者
「梓を送ってきますから」

愁也が神谷さんにそう告げて、彼の横をすりぬけ、私の手を掴んで引き摺るように歩き出す。


「は!?いいよ、仕事中でしょ!?」

あっという間に地下の駐車場まで連れてかれたけど、送るって、家まで!?
あんなに邪魔邪魔言ってたんだから、忙しいはず。

いくら私でも、これ以上の邪魔は出来ない。


「うるさい、黙れ、乗れ」

俺様全開で私に命令する愁也。


えぇー……?


しぶしぶ車に乗り込む私。


なんか恐いんですけど。
このひと、怒ってるの?


「神谷と、何話してた?
あんなに密着して」

運転席に乗り込んだ途端、愁也が私に問う。

密着?そうか私の気のせいじゃなかったんだ。やっぱり近かったよね、あの距離。ということは。


「えと、神谷さんのロリ定義について……」


つうか『神谷』って、彼はあなたより年上ですよね?いくら部下でも、呼び捨てっていいの?

彼の視線に堪え兼ねて、私は何とか言葉を探す。


「神谷氏によると、ハタチ超えたらロリではないと」

「要するに、梓は言い寄られたわけ?」

「……そういうことに、なりますね~……?」


やべ。ごまかし失敗。
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