私んちの婚約者
**
「え~!え~!
で?どうなったの!?」

次の日私は、不機嫌オーラをまき散らした顔で大学に行き、親友のマキに洗いざらい喋らされた。
合コンクィーンの異名を持つ恋バナ大好き彼女は、勢い込んで聞いてくる。


その顔に“良いネタいただきました”って書いてあるよ、マキ!


「知らないよ!
あんなの犬に咬まれたようなもんだよ。あいつ絶対私のこと嫌いだもん。ただの嫌がらせ!」

昨日は思わず茫然としてしまったけど、もちろん鳩尾への一発は忘れずに入れようとしたわけですよ。
ところがあいつ、避けた。難なく私の拳を手で受け止めたんだよ。

やるなコイツ……!

と仕方なく引き下がったけれど、あと一発くらい、いや三発くらい殴っておくべきだった……!


私は自動販売機で買ったパックのカフェオレにストローを突き刺す。
苛々しているせいで力を込め過ぎて、ストローがぐにゃりと曲がった。


「何でお父さんはあんなのを拾ってくるわけ!?」

「娘のあんたより、その優秀な社員を逃したくなかったからでしょ。あんたは生贄ってとこね」

私の憤りにマキが冷静に突っ込む。


くうぅ……!!


「需要がなければ生け贄にはなり得ませんよ、マキちゃん!」

「まあいいじゃないの。
梓は可愛いのに男に妙に冷めてんだから。

そのイケメン君に開発してもらいなさいよ」


マキは綺麗に塗ったネイルで私の額をつついて言う。


私が男に厳しいのはあの父を見てるからだけどね!!


マキが楽しそうに笑った。


「案外、恋が生まれちゃうかもよ?」
< 4 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop