私んちの婚約者
「な、なんででしょう?」

また零れた涙を、私は慌てて拭う。


「お腹、空きすぎたかなーなんて……」



無理のある言い訳は、最後まで言えなかった。
愁也の胸の中に、抱き締められて。


どうしよう。
どうしよう。


「愁也さん、私病気だ」


胸が痛いよ。



「うん、だから、
それ、恋だってば」


ぎゅ、とますます彼の腕に力がこもった。


「そんなの、わかんないじゃん……」


私の涙を、愁也の唇が拭う。


「わかるよ。
俺も、そうだから」


ゆっくり、ゆっくりと。


今までとは違う、優しいキスが降ってきた。



涙を拭う唇が、額、首筋、鎖骨と降りてきて。

その熱に溺れてしまいそう。


「梓、泣くなよ」


だって。

痛い。


もう、ごまかせない。


行かないで。




「しゅ、愁也さん、
行かないでよぉ……!」









「は?何が?」




思い切って言った言葉に、思いっ切り怪訝な顔をされた。
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