私んちの婚約者
「何って……イタリア行くんでしょ?」


「行くけど。
……梓もだろ?
俺ら結婚するんだから」




は?




……。




「あぁあ――!!?」




そうか。
愁也は私の婚約者だった。

わ、忘れてたよ……!!


愁也は嬉しそうな、困ったような複雑な顔をする。
私の顔を覗き込んだ。


「もしかして、俺と離れると思って、泣いた?俺は最初から梓と一緒に行くつもりだったけど」


「ーーっ!」


は、恥ずかしい!
心底、恥ずかしい!!


マキのにへら笑いを思い出す。

マキめ、気付いてたな!!
気付いてたのに、きっと私をけしかけようとしたんだ。



……友情に感謝するべきか、騙されたと怒るべきか……!


私は恥ずかしさと安堵がごちゃまぜになった大混乱な頭で、拳を握りしめる。


「そんなら最初っから言え、馬鹿愁也!!」


ええ、八つ当たりですとも!!



だけど愁也はふ、と苦笑して、


「だよなあ。最初っからちゃんと言うべきだった」


そう言って、私の前にひざまずいた。

私の手を取って、見上げてくる。





「……好きです、高宮梓さん。

俺と結婚して下さい」
< 56 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop