私んちの婚約者
「マリアに嫉妬してるんだ。可愛いね、梓」


ぼんっ!

私の頭、多分爆発した。


「言ったよな?
どうすればいいんだっけ?」


愁也はフィルタを置いて、くしゃりと前髪をかきあげた。
その黒髪の隙間から見える、艶めいた瞳に私はぞくりとする。

ゆっくり近づくその身体に、じりじりと距離をとって逃げても、更に近づく愁也。
臨戦態勢に突入した私と、お色気モードに移行した彼との、緊張感溢れる鬼ごっこ。

「逃がさないよ」


妖しい!妖しいそれ!


キッチンカウンターまで愁也に追い詰められて、
私の背中に冷たい台の感触。

わざとなのか、その両手が私を閉じ込めるように身体の両脇に置かれた。


「あのぅ、キッチンは、ご飯を作るところでですね……」

「うん、燃えるよな」

お巡りさん、ここに変態がいまーす!!


……もう。

仕方ないから、
色仕掛けでもするか。



私は愁也にキスをする。




途端に響き渡る、マリアの声。

「何してるネ!!離レテ!!」



……チッ。
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