私んちの婚約者
愁也が彼女を押し退ける。

「マリア、こういうのは止めてくれませんか」


少し不機嫌な声。

その様子からも、マリアが明らかに無理矢理したのだとはわかるけど。

そんなのちっとも私の気持ちを軽くする材料にはならない。



「う~……!!」



私の低い唸り声に、愁也がハッとこちらを向いた。


「梓……」


そんな顔しないで。


仕方ないだろ、みたいな。


―――っ。



「このドロボー猫ぉお!!
サ●エさんが許しても私は許さん!!!
そこへなおれぇえっ!!」

また何時代かと言われそうなセリフを吐いて、私はマリアへ指を突きつけた。

フン、とそっぽを向く彼女。

かわいくねぇえ!!


「梓、やめな」

愁也が冷静に私を諫める。
その落ち着き払った様子が、またカチンときて。


「うるさい、馬鹿愁也!
そなたに隙があるから
そのようなことになるのじゃ!!!」

「だから何時代……いや何キャラ?」

「とにかくあのムカっつくお猫様を私が調教し直したるわ!!」

ビシッとバシッとバキッと!

いまにも彼女に掴み掛かろうとした時。



「梓、やめなさい」



さっきよりもっとハッキリと、愁也が私に言った。





「なんでよ……」
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