私んちの婚約者
過去、婚約者
**
愁也がマリアと共にイタリアに発って。

「覇気がない」

マキが私を見て呆れたように言う。
今朝会ったときから、もう何度言われたか分からない台詞を繰り返して、彼女はそのまま指を伸ばして、私のほっぺたを引っ張った。

「いひゃい、マキひゃん」

ぶうぶう言う私を見て、マキが目を剥いた。

「しっかりして!!いつものあんたならここで遠吠えの一つでも出るでしょう!!」

「私は獣か……」

がっくりとチカラ無く呟けば、マキはますます私を揺さぶった。

「あーずーさああっ!?正気にかえんなさい!ほら、吠えてごらん、ワン!」

酷いです、マキちゃん。それ正気と違います。

私はふう、と溜息をついてみせて。

「私だってアンニュイになることがあるのですよ、マキさん」

そう言ったら、マキはまた私の頬を引っ張った。

「100年早い」

え~。

「マキひゃん、今日泊まりに来て?」

首を傾げて聞けば、彼女はふん、と鼻息も荒く腕組みをした。

「何あんた、そうカワイ子ぶってもアタシには通用しないわよ、愁也さんじゃあるまいしっ!」

と、言いつつも、マキはちゃんと私の家方向へ向かってくれる。


マキ大先生っ!
< 76 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop