私んちの婚約者
だけど家の傍まで来て、マキは足を止めた。
その目はじっと前を見ている。

「梓……あれ」

彼女の声が戸惑うように揺れて。私も釣られてそちらを見た。


遠目に見えたのは、うちの家の前に立つ、背の高い男の人。
肩下くらいの長さの髪を後ろで縛っている。

「誰だろ?」

お客様かな、なんて思いながらちょっと足早にその人に近づいた。

視線に気付いたのか、その人がこちらを見る。
私を見て、口の端を上げると、掛けていたサングラスを外した。


うわ。


何を思うより先に、咄嗟に出てきたのはそんな感想で。
彼の射抜かれるような、強い強い瞳に、ぎくりとして脚が止まってしまう。


“怖い”というよりは“衝撃”だ。


ところが、その人が私に呼びかけた。


「梓」


だ、誰ですか……?
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