私んちの婚約者
まだ業務が始まったばかりの真新しいオフィスは、綺麗だけれど殺風景だ。
梓がいたら、きっとそれだけで楽しいんだろうな、なんて思ってみた俺の心を読んだかの様に高宮社長が口を開いた。
「そういえばさ、梓は一緒じゃないの?」
社長は娘が来るものだと思っていたらしい。
俺だってマリアのことがなかったら一緒に来たかったんだ。
「えぇ……」
答えれば、彼は考え込むように黙り込む。
なんだ?
「あの、何か」
「日本に、一人なんだよね?」
は?
もう一度彼女の所在を確かめる社長は、珍しく神妙な面持ちで、視線を落とした。
「今、梓の叔父……私の妻の弟が日本に居るんだ。多分梓に会いに行く」
話が見えない。
「それが何か」
「梓を彼に会わせたくない」
え?
思ってもいなかった言葉に、俺は瞬きして彼を見つめ返した。
いつものとんでもないオッサンではなく、梓の面影を滲ませた端正な顔が見える。
梓がいたら、きっとそれだけで楽しいんだろうな、なんて思ってみた俺の心を読んだかの様に高宮社長が口を開いた。
「そういえばさ、梓は一緒じゃないの?」
社長は娘が来るものだと思っていたらしい。
俺だってマリアのことがなかったら一緒に来たかったんだ。
「えぇ……」
答えれば、彼は考え込むように黙り込む。
なんだ?
「あの、何か」
「日本に、一人なんだよね?」
は?
もう一度彼女の所在を確かめる社長は、珍しく神妙な面持ちで、視線を落とした。
「今、梓の叔父……私の妻の弟が日本に居るんだ。多分梓に会いに行く」
話が見えない。
「それが何か」
「梓を彼に会わせたくない」
え?
思ってもいなかった言葉に、俺は瞬きして彼を見つめ返した。
いつものとんでもないオッサンではなく、梓の面影を滲ませた端正な顔が見える。